平成20年度 事 業 報 告(その7)   



「児童相談所から見た南北海道の子どもたち」

 函館市の花「ツツジ」の盛りもいつの間にか終わり,緑溢れる季節になりました。会員の皆様におかれましては,4月の新しいスタートをそれぞれのお立場で乗り越えて,ちょっと一息のころでしょうか。私も函館短期大学に職場を移しましたが,やはり,気ぜわしい日々で・・・と,言い訳が次々出てきますが,取りあえず,滞っているところからのスタートと考え,平成20年度最後の学習会の様子から報告させてください。
 定例学習会⑥は,2月21日(土),20名の参加者が,函館児童相談所にて,土渕美知子所長からお話を伺いました。「児童相談所のイメージはどんなものですか?」という問い掛けから始まったお話は,渡島・檜山はもとより胆振を含む広域な地域での1200件の事例を7人のスタッフで対応しているハードさとともに,「保護者や子ども自身の意志」を大切にしている温かな基本姿勢などを伝えていただきました。南北海道の相談内容は,子どもの障がいや発達に関する相談が60%を占め,保護者の養育に関する養護相談が27%,不登校・家庭内暴力等の育成相談が9%,非行に関する相談が3%とのことです。最近の傾向としては,「①保護者の養育力の低下,②子どもの育ちの弱さ」があり,その中で増え続けている「虐待」に関して,「子どものつらさを発見する目を持ち続けてほしい」とのことでした。一番発見されにくい「性的虐待」についても,女子非行の背景にこの問題があることが多く,母親よりも養護教諭や学級担任への相談が多いとのことで,「子どもの気持ちを聴き取る力」の向上も求められました。親や周囲への気遣いを優先したために手遅れになった事例などからも,「通報・通告が親支援のスタート」という土渕所長のメッセージを心に刻みたいと思います。道南の子どもたちのためにと,土渕所長が力を尽くしてくださった各市町村「要保護児童地域対策協議会の設置」やネットワークづくり,そして,「早いうちからの広報が必要」として,虐待や社会的養護に関する授業や講義を通しての中学生,高校生,大学生への働きかけなど,私たちもそれぞれの場で引継ぎ,広げていきたいと考えることができました。参加した方々の声もお届けします。

【距離がぐっと近付いて・・・】
 児童相談所とは、今まであまりご縁がなく、本当に遠い存在でした。土淵所長さんのお話の中に、「親の急な入院による子どもの一時預かり」ということがあると聞き、驚きましたが、児童相談所との距離がぐっと近づいたように感じました。核家族化や片親家庭が増えている中で、疾病を持ちながら無理をして育児をいている親への支援が児童相談所の役割として重要になっていることを知りました。今後、こども本人だけでなく、その親の育児支援も含めて、「こんなケースはどうだろう・・・」という時、児童相談所に迷わずご相談させていただきたいと思うことができました。    北海道教育大学大学院 岩 代 晴 美

【優しい光が、心地よくて】
 「児童相談所のイメージは?」の問いに、自分の思い描いている情報のなさを痛感しました。保護者の養育力の低下の背景にも、いろいろな問題があり、困り、疲れ果てる前にサポートできる場があれば本当にいいなと感じます。幼稚園もそのように頑張り過ぎている親、戸惑っている親の支えになれるように力をつけたいものです。でも、当面、そこまでできなくても、話を聴いてあげることはできるので、「共に頑張り過ぎず」、楽しく子育てができるように働きかけしていきたいと思いました。子どもを取り巻く地域にある様々な機関の連携を図り、子どもたちや家庭をサポートしていくことの大切さも強く感じました。それにしても、児童相談所の仕事の多さには驚きです。職員の皆様、健康に気をつけてくださいね。児童相談所に足を踏み入れ、玄関前のガラスのレリーフやステンドグラスを見たとき、とても素敵で、心がほっとしました。この雰囲気が疲れた心を癒してくれると思います。優しい光が、本当に心地よかったのです。
 土淵所長さん、温かいお話、本当にありがとうございました。  市立はこだて幼稚園教頭 前 原 聡 子

【高い壁を取り除くために】
 今回、初めて臨床研の学習会に参加させていただき、少し児童相談所が身近になったような気がします。児童相談所や心療内科、行政機関、その他専門機関というのは、民間に勤める私たちにとって、敷居の高いイメージがあります。
 でも、この現代「ストレス社会」においては、「こころの病気」にかかることは、決して異常なことでも珍しいことでもありません。当然、子どもとその親御さんへの支援が必要になってくるわけで、児童相談所やメンタルクリニックなどに対する人々のイメージ(高い壁)を、私自身、一人の相談員として、対象者や身近な方々から声を掛け、行動し、取り除いていけたらなあと思いました。今日は学習会に参加してとてもよかったです。ありがとうございました。  函館障がい者就業・生活支援センター支援員 伊 藤 由 貴

【土淵所長のお話から考えたこと】
 保護者の養育力の低下、子どもの育ちの弱さは、中学校では性の問題、携帯がらみのいじめの問題、虐待の問題(過干渉やネグレクトという両極端の問題で、保護者が虐待だと思っていないケースも含めて)など、学校だけではとても対応できず、大きな問題に発展してしまうことが多々あります。私の学校の生徒指導では、事例に応じて柔軟に形を変える「チーム支援」と「連携ネットワークの効果的な活用」をキーワードに取り組んでいます。児童相談所にも常日頃から大変お世話になり、何人かの子どもたちが元気な学校生活を取り戻すことができました。子どもたちの笑顔と児童相談所の職員方々の温かい対応を重ねながら、改めて心よりお礼申し上げます。 土淵所長さんのお話を聞きながら、学校と各機関が上手に連携して指導・支援に当たることが、子どもの健やかな成長のためには不可欠であると考えました。様々な事例に効果的に応じることのできるよりよい連携の仕方を一緒に作り上げていきたいと考えております。どうぞ、よろしくお願いします。
                                           函館市立中学校校長 柏 崎 恭 子
 土渕所長は3月末でご退職になり,札幌を中心に「子育て支援」の活動を続けておられます。先日も,自立支援ホーム「ふくろうの家」で行われたコンサートでお会いすることができました。新しい立ち位置でのご活躍からも,また,学びたいと願っています。
 以上をもちまして,平成20年度の事業が無事終了したことを報告いたします。会員の皆様のご協力とご支援に心から感謝しております。ありがとうございました。     (文責:小岩真智子)

 【連 絡・お 知 ら せ 】
 平成20年度の年会費を未納の方に,振込用紙を同封しておりますので,納入方をお願いします。会費は「3000円」です。今年度の事業が終了することから,ぜひ,ご協力ください。また,「退会」を希望なさる方は,郵便振込の記入欄に,その旨をお書きくださいますようお願いいたします。お問合は事務局までお願いします。

<南北海道教育臨床研究会事務局>         
           〒041-0812 函館市昭和1-11-1  TEL・FAX:0138-45-2439
                     小岩眞智子(*自宅が事務局となっています)             
           ・Eメール:k-rinsho@sea.ncv.ne.jp                                     
           ・ホームページ:http://www2.ncv.ne.jp./˜kojina/rinsho/                       
           ・函館市の学校メールをご使用の方は,戸倉中学校:鳴海康司教頭までお届けください。  

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